暑くなってきましたね、梅雨から夏にかけて増えるのが皮膚病と耳の病気です。
耳の病気は保険請求が第3位に来るくらい多い病気です(犬の場合)。
今日は耳の病気で一番多い外耳炎に関して話そうと思います。
ちなみにアニコムさんのデータによると1位が皮膚疾患で2位が消化器疾患でした。
原因は体系的に理解しよう
外耳炎は病態として耳の外側から鼓膜までの耳の中に炎症が起こることです。
その炎症により、症状として次のようなことがよくあります。
- 痒み:耳が痒くてよく掻きむしる
- 耳垢が増える
- 基本的には耳垢は耳の機能により外に出るようになっていますが、その機能が落ちるのと炎症で耳垢が増えるのが重なり、耳垢の量が増えます
- 赤み:耳が赤くなる
- 腫れ:耳を掻きむしり耳の穴が見えなくなるまで腫れることもあります
- 痛み:掻きこわしてしまい、出血や耳を触られるのに痛がる様子が見られることもあります
原因として多いのがアトピー性皮膚炎や食物アレルギーといった皮膚のアレルギーの病気や脂漏症などの皮膚の状態異常が多いです。
現在ではPSPP分類というのを使って外耳炎の病態を整理していきます。
PSPP分類を軽く説明すると、外耳炎の病態を主因•副因•増悪因子•素因の4つに分けて考えていきます。
ちょっと長くなってしまいますが、理解しておくとその後の治療に役立つのでこんなことがあるのねと見といてください
主因
主因とはそれ単独で外耳炎を起こすことのできる因子です。
主なものに次のものがあります。
- ミミダニ
- アトピー性皮膚炎や食物アレルギーといった皮膚のアレルギーの病気
- 脂漏症
- 異物(毛、植物、砂など)
- ホルモンの病気
副因
副因は主因により二次的に起こるものです。
主なものに次のものがあります。
- 細菌
- マラセチア
- 耳に使う薬の悪影響
増悪因子
増悪因子は外耳炎の後に生じた耳の構造の変化で外耳炎をより悪化させる因子です。
主なものに次のものがあります。
- 耳の腫れ
- 耳垢の量が多い
- 耳の中にある分泌腺の異常
- 鼓膜の変化
- 耳が固くなる
- 鼓膜よりも中に炎症が進み中耳炎などが起こる
素因
素因は外耳炎が起こる前から存在する外耳炎の発症リスクを高める因子です。
主に次のものがあります。
- 耳の形の問題:例えば、耳毛が多い、垂れ耳、耳の穴が生まれつき細いなど
- ジメジメした環境:日本の夏のような高温多湿、水遊び後に耳に水が入るなど
- 耳の中にできものがある
- 中耳炎
- 免疫が低下している状態
- 過剰な耳の処置により耳が傷ついた場合など
この4つの因子を整理理解して治療していきます。
なかなか治らない外耳炎はこの4つの因子が短期的に治るものなのか、それとも生涯に渡り治療が必要なものなのか見ていく必要があります。
ちょっと難しいかもしれないですが、大事な考え方なのです。治らない場合はもしかしたら生涯付き合っていく因子があるのかもしれないです。
診断自体は簡単?
外耳炎の診断は症状と実際に耳を診て判断していきます。
耳垢の量が多ければ、耳垢を顕微鏡で見て感染症がないか、白血球が多く出ていないかを見ていきます。
細菌が確認されれば、膿皮症のところで説明した、細菌培養感受性試験を実施することもあります。
耳だけでなく、他に基礎疾患が疑われるなら、血液検査や、レントゲン検査、超音波検査といった全身検査を実施していく必要があります。
あまりにもひどい外耳炎や痛みがひどくて耳の中が見れない場合は麻酔をかけて特殊な耳の中をみる内視鏡をすることもあります。
中耳炎が疑われる場合はCTやMRIを検討します。
上記の検査をもとにPSPP分類に当てはめ整理し治療につなげてきいきます。
始めて外耳炎で病院に行く場合の多くは症状と耳を診ての診断が多いです。
治療は主因を治療しつつ他の因子の治療で耳も治していく
主因が特定できたならまずはそれの治療を検討します。
例えば、ミミダニが見つかったなら駆虫薬を使用、アレルギーが疑われるならそれの治療を実施します。
外耳炎自体の治療は耳の洗浄を実施します。
洗浄の方法は耳の腫れや耳垢の状態、耳の構造をみて決めていきます。
洗浄後は点耳薬を入れて炎症を治していきます。
腫れがひどければ、抗炎症剤を使用します。
細菌やマラセチアが多ければ抗生物質などを使用します。
点耳薬は家でも入れていただくことがあるので、練習が必要ですが、効果が長持ちする点耳薬もあるのでどういった薬を使うかはご相談になります。
耳の中の洗浄を家でやることは基本的にお勧めしてません。誤った洗浄により耳が傷ついてしまうことがあるため、病院での耳の処置をお勧めします。炎症で汚れがひどい場合は通ってもらいキレイにしていきます。
治った後、すぐ再発する、なかなか治らない場合
治った後にすぐ再発する場合は外耳炎の病態に関与する4つの因子(PSPP分類)に完全に直すのが難しいものがあることが多いです。
主因の場合
アレルギーや脂漏症、ホルモンの病気などは生涯にわたって治療が必要になります。
副因の場合
細菌やマラセチアは耳の洗浄や抗生剤などで治療します。必要により細菌培養感受性試験を実施します。
増悪因子の場合
基本的には耳の洗浄や点耳薬、飲み薬で改善します。
しかし中には耳の構造に変化が進行してしまい外科的な処置が必要なこともあります。
なかなか治らない外耳炎で鼓膜よりも奥の炎症が疑われた場合は耳の内視鏡やCT•MRIといった高度な検査治療が必要になります。
素因の問題の場合
生まれつきの耳の形の問題は治らないので、定期的に病院やトリミングで耳の処置を受けましょう。
家でのケアとしては耳の中はいじらないで、見える範囲を洗浄液で湿らせたコットンなどで拭き取る程度にしておきましょう。
洗浄液はアルコールフリーのものがお勧めです。
環境の問題であれば、気温や湿度に気をつけてもらい高温多湿を極力避けることもできます。
なかなか治らない外耳炎でまれに耳の奥の方にできものが見つかることがあります。その場合は外科的な手術が必要になります。
耳の奥は見えないこともよくあります。なかなか治らない外耳炎で奥にできものが後から見つかることはまれにあります。
なかなか治らない場合はこのようなことを考えながら治療にあたります。
外耳炎が慢性化してしまうとなかなか耳の構造が元に戻らない(内科治療に反応しない)こともあるので早期の治療、定期的な観察治療が大事です。
本日のまとめ
外耳炎の病態には4つの因子がある
その因子により短期的に治るものなのか生涯の付き合いが必要なのかが分かる
早期に適切な治療を受けるのが大事。慢性化してしまうと治らない、大きな手術が必要になってしまう
本日の記事がどなたかの参考になればと思います。
それでは、本日も良いペットライフを
最近ライン相談を始めました。ちょっとしたことからお悩みの方、気軽にご相談ください。
コメント